マスターが整骨院から帰ってくると、まだ開店前の「占いの館・やすらぎ館」にヒロミーがやってきた。
「マスターご無沙汰、ススキノやめて鶯谷来ちゃった」
「あんなところにキャバあったけぇ?」
「竹下通りや六本木ばかりじゃないのよ、アキバの時代だから」
助手の占い師Kが、珈琲を焙煎しながら、
「もうあれから1年も経つんですね」
ヒロミの長い髪はそのままでかなりの金色にか輝いている。
「やっと二十歳になったのに選挙権はさ、18歳に引き下げられちゃうし…でも夏の北海道は競馬で盛り上がったのよ」
「マスターもときどき、アキバにパソコン用品とか見に行ってらっしゃるの。おみやげは、高い靴履いた脚の長いエプロン掛けの女性との写メよ」
「へ~、マスターでもそんなとこ行くんだ」
とヒロミー。
咳き込むマスターに助手のKが、
「若い男の子も好きよ、バイだから」
咽びながらマスターは腰を摩っている。
「今週は若い3歳馬が走る。いよいよ一年に一回のダービーだね」
すかさずヒロミーが、
「付き合う彼氏がダービー、ダービーってお金借りに来るんだけど、いったい1年に何回ダービーがあるんだろう」
「それは地方競馬もあるからじゃないかな、8つ以上はダービー、あったな」
とマスター。
「今年のダービーは久々にサートゥルナーリア、ダノンキングリーで決まりかな、皐月賞の3強、強かったしなぁ、マスターの占いの出番もなさそうですね」
と助手はあっけらかん。
ヒロミーが、
「エメラルファイトって馬いるでしょう?札幌2歳ステークスで4着に入っていた馬で、アタシと一緒に東京来て、中山のスプリングステークスで勝ったのよ。
たぶん、ユキトちゃんが乗るのよね。ユキトちゃんかわいい顔してるし、なんかこう母性本能っての、キュンキュンしちゃうのよ、大好き」
あっけらかんの助手Kは、
「プリンシパルで勝ったザダルの方が魅力的だわ。480キロくらいで出られそうだし」
マスターも焙煎の手を速めながら、珍しくネルドリップで自慢の珈琲をヒロミーに振舞っている。
「まだ、開店じゃないのに、いいんですか?ラッキーライラック」
とヒロミーがブレイク。
「最近の天気は荒れ荒れさ。リオンリオンとヴェロックスの一騎討ちちということもあるかも。今年は栗東の馬が強そうだから、美浦のシュヴァルツリーゼより、レッドジェニアルだけど、ダノンチェイサーの指数も高そうだし」
とまとめようとするマスターに、あっけらかんのKが、
「逃げ馬がいないのよね、馬場が荒れて重くなれば、逃げ先行からヴィントも有りよね」
マスターの二度まとめ、
「ダービーもお祭りだから。雰囲気がいいんだよね。好きな馬を買うということで、川田騎手と逃げ馬に乗る予定の武騎手の二頭軸高配当でも狙いますか?サートゥルナーリアの絶対は馬場状態から、なしということで。
でも馬体重480キロは引っ掛かるんだよね。ダービー黄金体重だからね」
さて武豊騎手はどの馬に乗るのか、乗らないのか?馬体重に悩むマスターではありました。
コメントをお書きください